本事例では、加熱式自動乳鉢・撹拌機D18SEBを用いて、水系スラリーの濃縮・乾燥過程における粉砕挙動を評価した。その結果、粘度が上昇する過程においても処理は継続し、最終的に乾燥と粒径低減が同時に進行することを確認した。
本事例では、加熱型自動乳鉢D18SEBが、水分除去と同時に粒子構造へ作用できる処理装置であることを、実際の処理挙動と測定データを示しながら、「乾燥しながら砕ける」プロセスが実現可能であることを示す。
加熱自動乳鉢D18SEBの外観
スラリー処理においては、乾燥と粉砕が別工程となることで、工程数の増加や再凝集といった課題が生じます。本事例は、そうした課題を抱えるプロセスに対して有効。
・乾燥後にダマ化し、再粉砕が必要になる
・高粘度になると撹拌・処理が止まる
・濃縮・乾燥と粉砕が別工程になっている
つまり、乾燥と粉砕が分かれているプロセスの統合に有効である。
処理の進行に伴い、スラリーは濃縮され、粘度上昇、塊状化を経て、最終的に粉体化する。その連続的な状態変化を写真と動画で確認できる。
実験条件を提示しながら、状態変化を確認する。
・スラリーの作製
ゼオライト500g+水500gを自動乳鉢に投入して、加熱せずに1時間処理を行う。
※真空型の実験では、ゼオライト100g+水100gと材料量が少なかった
・実験条件
材料の状態に応じて、上記測定を行った。
ヒーター設定温度150℃(乳鉢底温度100℃)を維持しながら、処理を240分間行った。
処理時間0分
処理時間60分
処理時間180分
処理時間240分
材料状態変化の動画
■粒度分布の変化
スラリーの粒度分布は濃縮や乾燥が進む間も低減している。D50およびD90は時間とともに低下した。一方、D10は180分以降ほぼ一定となっている。粒度分布は時間とともに単調に減少するのではなく、異なる粒径指標で挙動が異なることが分かる。
水系スラリーの処理時間と粒度の推移
■粘度、材料温度、モーター電流値の変化
材料温度は、材料に水分を多く含んでいるときは、材料温度は上昇していく。しかし、材料が乾燥していくと、材料温度は低下していく。粘度は、水分が蒸発していくと高くなっていく。粉体になり始めると粘土の測定は出来なくなる。モーター電流は一定ではなく、瞬間的な変動も検知している。例えば、乳鉢内で材料分布の画不均一になる場合、モーター電流も材料の不均一と相関を持って変動することになる。特に、処理工期の材料が塊状化すると、その塊状が乳鉢内で不均一に分布するので、モーター電流のばらつきも大きくなる。
表.各パラメータ―の処理時間推移
| 処理時間(分) | 0 | 60 | 90 | 180 | 220 | 240 |
| 材料温度(℃) | 24.5 | 61.2 | 72.0 | 56.5 | 45.0 | |
| 粘度(mPa s) | 4400 | 6800 | 10600 | 54000 | ||
| モーター電流(A) | 0.23 | 0.22 | 0.22 | 0.34 | 0.23 | 0.21 |
モーター電流値推移
加熱式では、外部から熱を供給することで、水分蒸発に必要な気化熱が補われます。そのため、乾燥後半においても蒸発が継続し、処理全体が安定して進行する。
モーター電流は材料の流動抵抗を反映する指標であり、粘度および処理量と相関を持つ。
ただし、実際の電流値は時間的に変動し、特に高粘度状態では材料との接触の不均一により大きな揺らぎを伴う。そのため、評価には時間平均処理などが必要である。モーター電流は、材料状態によって、以下のような特性を持ち合わせるために、間接的に材料状態のモニターの適用にあたっては事前評価が不可欠である。材料の状態によっては、モニターとしての感度が低い場合があると考えられる。
表.モーター電流の有効性
| 項目 | 高感度条件 | 低感度条件 | 解釈ポイント |
| 処理量 | 多い | 少ない | 負荷変化の大きさ |
| 粘度変化 | 大きい | 小さい | 電流変化の大きさ |
| 接触状態 | 均一 | 不均一 | ノイズ要因 |
| 温度 | 安定 | 変動 | 状態解釈性 |
自動乳鉢によるスラリー処理には、真空方式と加熱方式の2つのアプローチがあります。それぞれ特性が異なるため、目的に応じた使い分けが重要である。
表.方式比較
| 項目 | 加熱方式 | 真空方式 |
| エネルギー供給 | 外部供給あり | 気化熱で低下 |
| 乾燥挙動 | 安定 | 後半鈍化 |
| 処理量 | 確保しやすい | 制約あり |
| 電流指標 | 有効 |
本プロセスは、濃縮・乾燥と粉砕が同時に求められる材料や工程に適しています。特に、再凝集や高粘度化が課題となる系に有効です。
① 電池材料スラリー
・ リチウムイオン電池 正極スラリー(NMC・LFP)
溶媒除去時に導電材が再凝集しやすい系
乾燥と同時に微粒化することで分散状態を維持
電極均一性・導電性の安定化に寄与
・ 負極スラリー(グラファイト+バインダー)
高粘度化により混練・乾燥工程でダマ化が発生
濃縮〜乾燥中も機械的作用が継続
粒子分散と形状維持の両立が可能
・全固体電池用複合材料(活物質+固体電解質)
乾燥過程での凝集・偏析が課題
乾燥しながら均一化・微粒化が進行
界面接触性の向上が期待される
② セラミックススラリー
・アルミナ・ジルコニアスラリー
乾燥時に粒子同士が強固に凝集しやすい
乾燥と同時に粉砕することで再分散性向上
焼結前処理の品質安定に寄与
・電子材料用ペースト(誘電体・絶縁材料)
高固形分で粘度上昇しやすい系
濃縮中もせん断がかかり続ける
均一な塗布性・膜品質の改善に寄与
・セラミック成形用スラリー(テープキャスト等)
乾燥工程での粒子分布の偏りが問題
乾燥と同時に粒径分布を調整
成形体の均質化に寄与
③ 触媒・多孔質材料
・ ゼオライトスラリー(触媒担体)
乾燥時に細孔構造が損なわれやすい
低温〜加熱制御下で穏やかに乾燥
微粒化と構造維持の両立が可能
・ 活性炭・カーボン系材料
乾燥後の凝集により比表面積が低下
粉砕を同時に行うことで分散性向上
吸着性能・反応性の安定化に寄与
・ 触媒インク(貴金属担持材料)
乾燥中に活性点の偏在が発生
濃縮〜乾燥中も混練状態を維持
触媒活性の均一化が期待される
Q1. 真空方式と加熱方式はどちらを選べばよいですか?
A. 用途によって最適な方式は異なります。低温で処理したい場合は真空方式、処理時間や効率を重視する場合は加熱方式が適しています。
目的に応じた使い分け、または組み合わせ(ハイブリッド方式)が有効です。
Q2. どの程度の粘度まで処理できますか?
A. 本事例では、数万mPa・sレベルまで粘度が上昇しても処理が継続しました。実力的には10万mPa・sレベルは可能と考えています。
一般的な撹拌機では停止しやすい領域でも、濃縮・乾燥・粉砕を連続して行える点が特長です。
Q3. 乾燥と粉砕は本当に同時に進むのですか?
A. はい、進行します。
粒度分布の変化から、濃縮段階からすでに粉砕が始まり、乾燥後も継続することが確認されています。そのため、工程の統合が可能です。
Q4. モーター電流から材料状態を把握できますか?
A. 可能ですが、使い方に注意が必要です。
モーター電流は粘度だけでなく処理量にも影響されるため、平均値や変動を含めて評価する必要があります。
条件を揃えることで、状態変化の指標として有効に活用できます。
Q5. なぜ真空方式では乾燥が遅くなることがあるのですか?
A. 水分の蒸発に伴い気化熱が奪われ、材料温度が低下するためです。温度低下により蒸発速度が低下し、乾燥後半で処理が鈍化する場合があります。
この課題に対しては、加熱方式やハイブリッド方式が有効です
本事例の詳細な実験条件、粒度分布・粘度データについては、下記の技術レポートをご参照ください。
