撹拌擂潰と撹拌擂潰機としての石川式撹拌擂潰機の特長についてご紹介します
撹拌擂潰とは、文字通り撹拌は「混ぜる」こと、擂潰は「すり潰す」ことを意味します。
単なる撹拌だけ、擂潰(粉砕)だけとは異なり、すり潰し(摩砕、解砕、粉砕)と撹拌、分散、混練の複数作業の同時処理を行うことにより、処理の効果が相乗的に向上します。
この撹拌擂潰作業を処理する機械である撹拌擂潰機は、すり潰し(摩砕、解砕、粉砕)作業と撹拌、分散、混練等のまぜる作業を同時に行います。
撹拌とは複数の材料を混ぜることを指します。
石川式撹拌擂潰機による撹拌擂潰処理は、材料中の粒子が杵先ですり潰される(粉砕、解砕される)と同時に、材料中に撹拌・分散されます。
杵の回転により発生する杵先と鉢とのずり応力や、杵先が材料に直接加える摩擦力により、粒子は細かくすり潰されると同時に、材料中に均一に撹拌・分散・混練されます。
フィラー(粒子)は細かく粉砕、解砕されればされるほど材料中に均一に撹拌、分散され易くなります。
石川式の杵の自公転により杵先が繰返し機械的エネルギーをフィラーに加えることで、粉砕されたフィラーが均一に分散されると同時にフィラー表面に均一に添加剤が圧着されます。液体から高粘度なスラリー、ペースト状な材料や粉体に至るまで様々な材料において撹拌擂潰処理の効果が発揮されます。
以上の事から擂潰(粉砕、解砕)と撹拌、分散、混練処理が相互に影響し合うことで、すり潰した粒子が再凝集し難く、分散状態が安定する等の撹拌と擂潰(粉砕)を別々に処理する場合にはなかった相乗効果を得ることができます。
「すり潰す必要がないと考えていた材料でも、撹拌擂潰処理をすることで材料にずり応力と摩擦力が加わることにより、単なる撹拌処理と比較して、処理後に再分離しづらくなる結果が得られました。」
石川式攪拌擂潰機による処理は、色素を細かく粉砕し均一に練り込むため、色付きが良く再凝縮しにくくなります。
小麦粉とパプリカの混合結果
左:攪拌専用機(攪拌のみ)
右:石川式攪拌擂潰(攪拌&擂潰)
小麦粉とターメリックの混合結果
左:攪拌専用機(攪拌のみ)
右:石川式攪拌擂潰(攪拌&擂潰)
石川式撹拌擂潰機の杵が乳鉢の中を適度な力で繰返し均一にムラなくかくことが出来るという石川式撹拌擂潰機の機能は、既述の撹拌擂潰処理作業「すり潰し、撹拌、混練、分散の同時作業」の他に「①粉体を撹拌しながら粒子表面に均一に処理を施す作業」や「②溶剤等を(蒸発)させ、材料を濃縮させながら均一に混練する作業(濃縮を進め、乾燥、固化させずに粉末化処理)」真空・加熱機能付き石川式は処理速度を加速「③杵先が材料に繰返し適度な力を加えて擂る動作により「メカニカルアロイング」や「メカノケミカル」「メカノフュージョン」と言った合金合成や化学反応の促進にも活用されています。石川式は乳鉢の内面の温度を高精度で制御出来るのでシランカップリング剤、溶剤等の効果を高めることが出来ます。
粉体を撹拌しながら粒子表面の均一な処理
・シランカップリング剤処理
・シリコーンコーティング
・ガラス粒子の表面処理
メカニカルアロイング
複数の元素や化合物を固体の状態で機械的に混合することで合金を制作すること。メカニカルアロイングにより,溶融状態でも溶け合わない元素同士の合金を作ることが出来ます。
メカノケミカル
固体物質の粉砕過程での摩擦、圧縮等の機械的なエネルギーを利用する結晶化反応、固溶反応、相転位反応等の化学反応のこと。
石川式撹拌擂潰機は、鉢の中に投入された材料を1本から複数本の杵(乳棒)が撹拌(混ぜる)、擂潰(擂り潰す)作業を同時に行います。
同様の機構を持った機械も多くありますが、この中でも石川式撹拌擂潰機はその独自機構により、粉体や液体から高粘度帯までの材料を杵(乳棒)が鉢の中をムラなく擂り潰し、かき混ぜるので、高品質で均一な処理結果を得られます。
「今まで色々な機械で試して上手くいかなかった処理が、石川式撹拌擂潰機を使用することによって上手く処理することができました。」
石川式撹拌擂潰機は、すり潰し(粉砕、解砕)をしながら撹拌、分散、混練を同時に処理します。
処理する材料の粘度は液体から100万m pa sec以上の高粘度な材料への対応が可能です(信越化学工業製 のKF96を処理)。攪拌擂潰中に粘度が変化する材料にも柔軟に
対応します。
高粘度帯の材料処理については、石川式撹拌擂潰機そば2号機の「そばの水回し作業」での実績が実証されています。
そばの水回し作業
そばの水回しとは、そば粉に水を均一に行きわたらせ練り上げ、そば玉にする工程を指します。
そば玉の粘度は非常に高く、そばの水回しはそば打ち作業の中では体力のいる作業と言われています。
石川式撹拌擂潰機は短時間でそば粉に水を均一に行きわたらせ練り上げ、その間、そば粉の発熱を抑えると同時にそば粉をすり潰す動作が加わるので、そば本来の香りが際立つそば打ちを実現します。
石川式撹拌擂潰機の長く使用された乳鉢を真上から撮影した写真
杵先が鉢の中を万遍なく均一に移動していることが分かる跡が整然と残されています。
自公転する杵の杵先は少しずつズレながら鉢の中に軌道(エピサイクロイド曲線)を描きます。その杵先の軌道は2万周に一度しか同じ軌道を通らない様に設計されており、杵先の軌道内にある材料を均一で精緻に撹拌擂潰処理をします。
※写真:杵の軌道内に描かれた杵先の軌道の跡(この軌道跡が株式会社石川工場の社章にもなっています。)
杵は機械の杵の取付部に最適な角度で取付られているため、杵先が材料を確実に巻き込むと同時に材料の上下の移動が促進され撹拌作用が高まります。
杵筒は鉢との摩擦により杵の自転公転と逆方向に回転します(OR式の場合)。
この杵筒の回転により杵先が効率良く材料を巻き込むと同時に杵先と鉢との摩擦を逃がし、摩擦熱の発生を抑制します。これが石川式撹拌擂潰機が撹拌擂潰処理中の発熱が小さい理由の一つとなっています。
杵先と鉢が点で接するため、エネルギーを一点に集中する事が出来、高い粉砕力を発揮します。この杵先と鉢の接点は、杵の自公転と杵筒の回転により常に移動するので、撹拌擂潰の作業効率を高め、杵先と鉢との摩擦力を分散し摩擦熱の発生を抑制し、杵先の偏摩耗を防ぎます。
杵先の擂る作用が粒子(フィラー)表面に材料を圧着させるので処理後に再凝集、再分離が生じ難くなります。
石川式攪拌擂潰機は、杵が鉢の中に投入された材料をムラなくかく(すり潰す)ことで均一な撹拌、分散、混練処理と同時に精緻なすり潰しを実現する事が出来ます。
① 材料を擂り潰すポイント ①のポイントは杵の移動と杵の回転に伴い常に動きます。
② 材料を確実に巻き込みながら分散、混練処理をするポイント。杵の回転によりクリアランスは変動します。
③ 材料の上下の移動を促進。杵の回転により材料の上下の撹拌を促します。
撹拌擂潰処理は適度な力で徐々にゆくっくり進むので、作業中の杵先の摩擦による発熱が小さくなり、材料に対して過度な衝撃を与えません。
石川式攪拌擂潰機は処理材料(対象)の品質劣化や思わぬ化学変化が起きにくい処理環境を実現します。
均一で高品質な処理結果を導き出すための撹拌擂潰条件を設定することで、人手作業に起因する処理のムラやバラつきを抑えられ、処理結果(実験結果)の安定性と再現性を実現。
杵の一定した回転により、手作業以上の高品質で安定した処理結果を得られたり、実験結果の再現性を高めることが可能です。
・処理(作業)の効率化、均質化
手作業より作業速度は早く効率的で、その処理速度は決められた一定の速さで、ムラなく均一にかき混ぜる作業を繰返し行うことが出来る
・一定条件での繰り返し処理
人手作業では難しい一定速度、同じ条件での(長時間の)繰返しによる処理が可能。
乳棒、乳鉢を使ったすり潰しの作業(撹拌擂潰の作業)は、時として長時間の重労働、単純作業となります。この作業は夜間に及ぶ場合もあります。
この様な作業は、石川式撹拌擂潰機に置き換えることで、人は人しか出来ない作業に時間を割く事が出来ます。
石川式撹拌擂潰機の基本機構は乳鉢と杵(乳棒)を使用した攪拌擂潰の仕組みとなっており、どこの研究室、理科室でも必ずある白色の磁器製の乳鉢と杵によるすり潰しの仕組みと同一です。このため、手作業のすり潰し作業を容易に石川式撹拌擂潰機に切り替えることが可能です。
石川式撹拌擂潰機は、オープン型の乳鉢に材料を投入して処理を行いますので手作業と同様に撹拌擂潰処理中に乳鉢の中の材料の状態を確認しながらの作業が可能です。機械稼動中に材料の追加投入をしたり調合を変えたり杵(乳棒)の回転速度を変更する等の調整が可能です。 さらにはその時々の材料の状態や温度、湿度等の環境に合わせた処理にも柔軟に対応する事が出来ます。
石川式撹拌擂潰機の主力機種は材料(対象)が触れる部分(乳鉢、乳棒の材質)に磁器を採用し、撹拌擂潰処理中のコンタミ問題を低減します。
磁器製の乳棒、乳鉢はビーカー、フラスコ等の石英ガラス同様、実験や研究用器具用の材料として広く普及し化学的安定の性質を持ち、耐薬品性、耐摩耗性、耐蝕性、高靭性、硬度にも優れた材質です。
多種多様な試料の撹拌擂潰処理に適応する材質であり、材料の撹拌擂潰処理に処理材料の中にコンタミが混入する心配が少なく、加えて金属コンタミの心配がありません。
※磁器の主成分はSiO2とAlO3です。鉢の材質は磁器の他、高純度アルミナ乳鉢、花崗岩の石臼、メノウ鉢についてもSiO2、AlO3が主成分となります
石川式撹拌擂潰機はこの優れた材料である磁器製の乳棒、乳鉢を搭載した機械を研究開発用の少量から、ある程度の量産用途の大型機までを揃えています。
磁器製乳鉢は最大の使用容積100Lまでご用意。量産にもご利用頂ける様な大型磁器製乳鉢を搭載した機械があるのは石川式撹拌擂潰機だけではないかと自負しています。
撹拌擂潰処理する材料を変更する場合は、乳鉢、乳棒(杵)を交換するだけ。
少量多品種の生産や研究開発等の様に頻繁に処理材料を変更したり、撹拌擂潰条件を変更したりする場合に柔軟に対応出来ます。加えて、処理した材料は乳鉢単位でロット管理が可能です。
※最新の卓上型(Dシリーズ)は乳鉢を取出し易く改良しました
予備の杵(乳棒)と乳鉢をご用意頂く事で処理中に鉢と杵を洗浄し、その間に作業の準備をすることで効率の良い作業が可能です。
材料を変える毎に機械を分解し洗浄、清掃する必要のある機械と違い、石川式撹拌擂潰機は処理材料が直接触れる乳鉢と乳棒を交換するだけで処理材料の変更が可能で
しかもこの乳鉢、乳棒は洗浄し易い形状です。
石川式撹拌擂潰機の杵の回転機構(自公転部)をはじめとした機械の可動部は、単純機構でその内部には分厚く頑丈な歯車を使用しています。
また、石川式撹拌擂潰機の基本機能である撹拌擂潰の機構は100年前の機械と変わることなく、機械をメンテンナンスする技術はしっかりと受け継がれています。
この事で100年前の石川式撹拌擂潰機と同等性能の機械を購入することが可能であり、同時に100年前の石川式撹拌擂潰機を修理する事も可能です。 *1)
※石川式撹拌擂潰機の磁器鉢(乳鉢)と磁器杵(乳棒)は100年間の時を経ても同じものが取り付けることが出来ます。 *2)
製品の製造工程の変更や変更承認の手続きは手間が掛かり煩雑です。石川式撹拌擂潰機を継続して導入頂く事で、この様な煩雑な手間から解放されます。
石川式撹拌擂潰機は乳棒をモーターの力で回転させ乳鉢の中の材料を均一にすり潰し同時に混ぜ合わせることが出来る機械ですが、この基本的な性能と機械機構は120年の間変わっていません。
一方で石川式撹拌擂潰機がすり潰し、混ぜる材料(対象)は、かまぼこ等の水産加工物に始まり、現在では金属、カーボン、ガラスペーストの様な電子部品材料や歯科材料、人工骨材料、軟膏、化粧品材料、顔料、セラミックス材料、全固体電池の材料、カーボンナノチューブ、高精度砥石等最先端の高能材料の技術開発や生産における高精度で緻密にコントロールする必要のある撹拌擂潰処理に導入頂いています。
この事はスマートフォンに代表される電子機器の小型/高性能化や自動車の電装化、環境対応、さらには高齢化社会に対応した社会作りにも石川式撹拌擂潰機が実現する撹拌擂潰が欠かす事が出来ない技術である事を裏付けています。
石川式撹拌擂潰機は、機械であると同時に道具です。包丁という道具は使う人の使いこなし方により、様々な対象物を切れ味鋭く切ることが出来ます。食べ物は、この切り方により材料の食感、味に影響が出てきます。石川式撹拌擂潰機という道具を使いこなすことにより、まぜるという撹拌擂潰作業において、様々な対象物(被加工物)を高品質に処理する事が出来ます。
コンピューターにより全自動化された機械は誰でも直ぐに使いこなすことが出来る反面、誰でもがすぐに画一的な製品の大量生産を実現してしまいます。
例えば、そば粉や小豆は同じ産地であってもその出来具合は採れた年の天候に微妙に左右されます。また実際に使用する日の気温や湿度によっても材料を練る際の時間や力の入れ具合、水分量、材料の配合、加熱の加減等の調整が必要になります。しかしこの調整はその時の出来具合を見ながら、長年の経験を持つ熟練した職人がそば粉や小豆と会話をしながら進めるしかありません。石川式撹拌擂潰機は全自動化された機械では難しい、熟練した職人の経験をもとにしたこれらの微妙な調整が可能です。石川式撹拌擂潰機は画一的な大量生産ではなく、この様なこだわりのお菓子作り、そば打ちをする職人にご利用頂きたい機械です。 そして石川式撹拌擂潰機という道具を使いこなす技を身に着けることで、画一的な大量生産思想からは実現出来ない、他社には真似できない独自の製品開発をすることは、ものづくり原点でもあります。
ゆえに包丁職人が包丁の切れ味を追求するのと同様に、石川工場は、撹拌擂潰機の機械メーカーとして石川式撹拌擂潰機の撹拌擂潰性能向上を追求し続けています。
*1)90年以上前に製造された石川式撹拌擂潰機が現在でも稼動している例を示し、また、現在でも技術的に修理が可能であり、その為の技術継承を行っているという事実を記述しています。
石川式撹拌擂潰機は技術的に機械修理は可能ですが修理の内容によっては修理費用が高額になり、結果的に新しい機械をご購入された方お得な場合があります。
*2)この記述は100年前に製造された石川式撹拌擂潰機と現在製造されている石川式撹拌擂潰機は、同じ形状の磁器鉢と磁器杵を搭載しているという客観的な事実を述べております。
現在ご導入された機械に搭載されている磁器鉢と磁器杵が100年後にご提供出来るという事をお約束をしているものではありません。