石川式の特長

石川式攪拌擂潰機とは

石川式撹拌擂潰機(以下 石川式)は、すり潰し(摩砕、解砕、粉砕)と撹拌、分散、混練の同時処理が可能な自動乳鉢です。ペースト状の材料、粉体や高粘度のスラリー、化学材料、高機能材料などさまざまな材料を効率的に処理することができます。

石川式は、すりつぶし(粉砕、摩砕)、撹拌、分散、混錬、混合の作業を同時に行い、独自機構を用いて材料を均等に処理します。これにより、材料は均一かつ均質に混合され(均一分散)、高い品質が実現されます。これから、その独自機構を実現するための独自技術について説明いたします。

杵の軌跡・エピサイクロイド曲線

均一な攪拌擂潰処理

石川式撹拌擂潰機の長く使用された乳鉢を真上から撮影した写真

杵先が鉢の中を満遍なく均一に移動していることが分かる跡が整然と残されています。

1.杵の動き

杵は公転しながら自転も行い、さらに杵自体が回転するという複雑な動きをします。

この独特な動きにより、材料を効率的かつ均一に粉砕することが可能です。。

石川式攪拌擂潰機の杵の3つの回転

2.杵の軌跡にエピサイクロイド曲線を採用

杵の軌跡にエピサイクロイド曲線を採用することにより、鉢内を密に均一、かつ均等に杵が軌跡を描くことができる。

また、エピサイクロイド曲線は、中心から外周に向かって軌跡を描き、最外周から鉢中心に向かって軌跡を描くため、鉢内の材料を効率よく撹拌することもできる。

 

エピサイクロイド曲線は、水色の定円(静止している円)の上を紺色の動円(回転する円)が外接しながら移動する際、動円上の一定の点が描く軌跡です。

 

右図では、定円の半径が3、動円の半径が1の場合のエピサイクロイド曲線が描かれています(オレンジ線)。

 


 

右図は、微量機Tinyの仕様に基づいて描かれたエピサイクロイド曲線を示しています(オレンジ色の線)。定円の半径は公転半径から自転半径を引いた値とし、動円の半径は自転半径と同じに設定されています。

この設計により、密で均一な杵軌跡を描くことが可能になりました。

このエピサイクロイド曲線の杵軌跡への採用が独自の機構の一つです。

 

しかし、この設計だけでは杵が鉢の中心を通ることはありません。


3.杵を傾ける

右図には、微量機Tinyの装置の断面図が示されています。

この図から、杵が鉢に対して斜めに取り付けられていることが明らかです。

さらに、杵の中心が鉢底の中心に接していることも確認できます。

杵が自転と公転をしながらエピサイクロイド曲線を描いても、これまでは鉢底の中心に軌跡を残すことはありませんでした。

しかし、図のように杵を斜めに配置することで、杵は鉢底の中心を通過し、鉢全体に密で均一な軌跡を描くことが可能になります。

 

もう一つの独自機構は、杵を斜めに取り付けて鉢底の中心を通過させることです。。

これら二つの独自機構を組み合わせることにより、杵軌跡は下図のように描かれます(オレンジ線)。

この図は微量機Tinyの鉢上での杵軌跡を示しています。鉢内を密に均一に、そして均等に描くこの軌跡により、効率的かつ均一な材料の粉砕が可能になります。

杵がこの軌跡を描くことで、極微量(0.5g)の材料でも確実に粉砕できるため、微量機Tinyは高価な材料を使用する研究開発者から高い評価を受けています。

杵を斜めに取り付けた時のエピサイクロイド曲線

(微量機Tinyの杵軌跡)

石川式攪拌擂潰機の特長

石川式は他社製品にはない処理特性を持ち合わせております。

処理特性1 手ずりを再現できます

石川式は杵軌跡にエピサイクロイド曲線を採用することにより、鉢内を密で均一かつ均等な軌跡を描く。これにより手ずりのような処理が再現できます。また、手ずりに近い力加減で処理を施すため、攪拌擂潰時に起こりやすい材料の構造破砕や結晶化が起きにくいという特性もあります。

処理特性2 撹拌・擂潰の同時処理

擂潰(粉砕、解砕)と攪拌、分散、混練処理が同時に行えます。杵が自公転の回転運動をすることで、被擂潰物(粒子)に機械的エネルギーを加え、粒子はムラなくすり潰されます。これにより鉢内の材料全体を均一、かつ均等に処理することが可能です。また、粒子表面に異なる材料を均一に被着させることも可能です。

処理特性3 意図しない化学変化を起こしにくい処理方法

石川式は杵運動の力や速度を調節をして、適度な速度で加工処理を行うことが可能です。これにより処理中の急激な発熱や衝撃等で起こる、意図せぬ化学変化が起きにくくなります。製品によっては加熱や冷却機能もあるため、化学反応を促進、抑制しながらの処理も可能です。

処理特性4 ちょうどいい力加減と粒子サイズ

2次粒子から1次粒子への加工等、用途に適した細かすぎないサイズに整粒することが可能です。カーボンナノチューブのような硬い材質に対しても、粒子単位で他物質を混ぜ合わせることができます。

処理特性5 高粘度体の処理

石川式は粉体や硬い材質だけではなく、高粘度体の処理も得意としています。だまができやすい粉末と液体の処理も、石川式では均一なペースト化ができます。対応処理粘度は100万m pa sec程度まで可能です(信越化学工業製のKF96を処理可能)。これにより、攪拌擂潰中に粘度が変化する材料にも柔軟に対応できます。

処理特性6 高粘度体の脱泡

処理特性5の高粘度体の処理に加えて、真空機能を有する製品では、高粘度体の脱泡も可能です。

昨今では、3本ロールや、ニーダー、ボールミル等では「力が強すぎる」と感じていたお客様に、弊社の製品をご使用いただいている傾向にあります。

石川式は、他社製品では出すことのできない「ちょうどいい」を提供いたします。

付加機能による処理の多様化

基本機能の攪拌擂潰に付加機能を付けることで、さらに多くの処理を行うことが可能です。

隔離密閉

攪拌擂潰機に専用のカバーを付けることで材料の飛沫を防ぎます。カバーに紫外線防止加工を施すこともでき、紫外線による化学反応を避けたい処理にも最適です。また、

乾燥した空気や窒素を流し化学反応を促しながらの攪拌擂潰もできます。

活用例:酸化鉄、カーボンブラック、3Dプリンター用材料(UVモノマー+フュームドシリカ)

真空・減圧

真空・減圧をしながら攪拌擂潰を行うことで、処理の効率化と加工作業を一台で完結をすることができます。真空状態での攪拌では脱泡処理が見込めます。

活用例:スラリーの濃縮乾燥、粘調体の脱泡、不活性ガス置換下環境の攪拌擂潰、砥石ペーストの脱泡

加熱・冷却

攪拌擂潰中に極低温(-20℃程度)から高温(200℃程度)の温度を加えることができます。加工時に熱反応が起こる材料には低温処理を加えたり、一定の温度を維持したりしながらの攪拌擂潰・混練が可能です。

活用例:全固体電池材料、半導体ヒートシンク材料、3D プリンター用樹脂