まぜる物語

石川工場は、120年余前に東京都港区で産声を上げ、以来現在に至るまで石川式撹拌擂潰機(カクハンライカイ機)の製造販売を通じて製造業へ貢献して参りました。

「撹拌擂潰(カクハンライカイ)」とは、噛み砕けば「まぜる」こと。現社長で6代目になる石川工場の歴史は、二度の戦禍を耐え抜いた、まさにまぜる会社の物語なのです。

このページでは、皆さんに石川工場の歴史や、石川式撹拌擂潰機の秘密、業界の豆知識などを「まぜる物語」として紹介します。

石川式撹拌擂潰機の「撹拌擂潰」とは

石川式撹拌擂潰機の「撹拌擂潰(カクハンライカイ)」という言葉、皆さんにとっては、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。

 

撹拌は「かき混ぜること」を、擂潰は「すり潰すこと」をそれぞれ表しています。したがって撹拌擂潰は、かき混ぜと、すり潰しを同時に行うことを意味します。「まぜる物語」の「まぜる」が指しているのは、石川工場独自の「撹拌擂潰」技術でもあるのです。

石川式撹拌擂潰機が撹拌擂潰処理をする対象は主に粉体、液体、ペースト。細かい粒子をすり潰しながら更に細かくし、同時にその粒子を液体の中に満遍なく分散させることが、石川式撹拌擂潰機の仕事です。

 

この過程は、製造工程全体から見れば目立ちにくいかもしれません。しかし、食品、化学材料や薬品、高機能材料など、さまざまな産業の製造工程で、必ずと言っていいほど必要になるものです。それだけでなく、製造する製品の品質を決定づける、重要な工程のひとつであると言って過言ではありません。石川式撹拌擂潰機は、縁の下で、あらゆる製造現場を支え続けているのです。

石川式撹拌擂潰機を使うメリット

石川式撹拌擂潰機は、なぜ、あらゆる製造の現場で必要とされるのでしょうか。

 

材料を、元の状態より細かく粉砕して均一に混ぜる処理は、あらゆる製造現場や研究開発現場で必要です。石川式撹拌擂潰機の優れた点は、その「まぜる精度の高さと、その状態の安定性」にあります。粉砕した粒子の大きさが揃っているほど、また、素材と素材の混ざり具合が均一であるほど、商品として流通する製品の品質も向上します。

 

では、なぜ粒子が細かく粒揃いだと、製品の品質が高まるのでしょう。それは、多くの物質が「物質の表面積が増え、密度が高くなるほど、物質そのものの性能が強く発揮される」という性質を持つからです。

 

分かりやすく置き換えて考えてみましょう。赤い顔料を溶媒に混ぜ、赤い塗料を作りたいとします。大きさがバラバラの顔料の粒子が、溶媒の中に、偏って散在している状態を想像してみてください。塗料の伸びは悪く、塗りムラができてしまうことは明らかです。また、この状態では塗料が光を乱反射し、鮮やかな発色を得られません。

 

顔料の粒子が均一の大きさに揃い、満遍なく溶媒に溶け込んでいれば、スムーズに塗り伸ばせ、塗面も滑らかで、鮮やかに発色します。ミクロの世界での話にはなりますが、このような現象は塗料に限らず、他の製品に置き換えても同じことが言えるのです。石川式撹拌擂潰機の精度の高い撹拌擂潰が、さまざまな産業で活用いただけている理由です。

流星の軌跡から生まれた石川式撹拌擂潰機

石川式撹拌擂潰機を用いて撹拌擂潰処理をすると、粒子が揃った均一な処理結果が得られます。その秘密をこっそりお伝えしましょう。

 

秘密のひとつは、石川式撹拌擂潰機の乳棒(杵)に隠されています。石川式撹拌擂潰機の杵の回転は「自転」と「公転」という異なる速度の2つ回転により、円を描きながら乳鉢(臼)の中を移動します。これにより2万回に一度しか臼の中の同じ位置を通らない、独自の軌跡(エピサイクロイド曲線)を描きます。精緻できめ細やかな軌道によって、ムラのない材料の撹拌擂潰処理ができるのです。また、杵先は乳棒そのものがクルクルと回転するので材料を巻き込みやすく擂り潰しの効率が上がります。

 

この軌跡は石川工場の企業ロゴにも採用されていますが、実は、その誕生にはとてもロマンチックなエピソードが隠されています。

創業者の石川 平蔵には、真夜中の東京散策をしながら考えごとをする日課がありました。彼が石川式撹拌擂潰機の開発に苦心していたある日のこと。東京の街を彷徨いながら夜空を見上げる彼の目に、流星が弧を描いて落ちていく様子が映りました。この流星の軌跡こそ、石川式撹拌擂潰機の描くエピサイクロイド曲線の原案です。はるか昔に流れた流星が、今日の石川式撹拌擂潰機につながっているんですね。

石川式撹拌擂潰機の強み

製造の現場で使われ、石川式撹拌擂潰機と近い働きをする機械は、「粉砕機」「撹拌機」「分散機」「混練機」など、複数存在しています。

これらの機械は、処理したい材料の硬度や粘度、粒子の大きさ、処理量の大小に応じて使い分けられています。

 

また、それぞれ、「粉砕=砕く」「撹拌=かき混ぜる」「分散=材料の中に粒子を散らばせる」「混練=練り合せる、混ぜ合わせる」ことを意味しますが、石川式撹拌擂潰機の最大の特徴は、これらの処理を同時に行えることです。単一の機能でなく、その全てが1台でまかなえる点にあります。

このため、処理効率は格段にアップし、別々に処理を行なうのに比べて、優れた処理結果を得られます。複数の機械を導入する必要がないため、導入コストの面でも優れています。

 

さらに乳棒や乳鉢を交換することで、撹拌擂潰する材料の変更にも容易に対応できるため、少量多品種での撹拌擂潰処理に適しているという特徴があります。乳棒のバネの強さや杵先の形状、回転機構を変えることで、粉砕力の強弱や、撹拌性能の強弱も変更可能です。

1台の機械でさまざまなシーンに対応できるというフレキシブルな使用感が、石川式撹拌擂潰機の大きな強みなのです。

100年後も動く石川式撹拌擂潰機

石川式撹拌擂潰機の構造と仕組みは、明治30年の創業から120年以上も変わっていません。

 

核となる構造は、モーターの力を伝えるシャフトと数個の歯車の組合せだけと、非常にシンプル。丈夫で長持ちし、メンテナンス性も抜群です。100年前に製造された石川式撹拌擂潰機でも修理でき、現役で使い続けることができます。

 

もちろん、時代に合わせて石川式撹拌擂潰機は進化しています。しかし、杵先が鉢の底を精緻に掻き、乳鉢に投入された材料を乳棒がムラなくすり潰し、かき混ぜるという基本的な機構は、100年前から変わっていません。100年前の機械に最新の乳棒、乳鉢を取り付ける事も可能ですし、部品加工や組立手法についても、伝統として社内で継承し続けています。

 

100年前の機械が今でも使える理由は、私たち石川工場が、石川式撹拌擂潰機を100年前と同じ思想で丁寧に作り続けているからに他なりません。もし、これを読んでくださっている方が石川式撹拌擂潰機を導入してくださったとしたら、その石川式撹拌擂潰機は、100年後もあなたの会社で動き続けていることでしょう。

石川式撹拌擂潰機が混ぜるもの


石川式撹拌擂潰機は120年前に、水産加工物の製造現場で、魚肉のすり潰しを自動化する目的で開発されました。

 

開発当初は木製の杵先と石臼という構成だった石川式撹拌擂潰機ですが、その後の研究により、磁器製の乳鉢と乳棒を採用した機械を開発。磁器製の乳鉢と乳棒は、学校の理科室でもおなじみの実験道具ですが、硬く、削れにくく、薬品耐性も高いという特徴があります。

 

また、撹拌・擂り潰し中の摩擦熱が発生しにくいため、熱による素材の変質を防げます。磁器製の乳鉢と乳棒を採用したことで、石川式撹拌擂潰機は食品以外の撹拌・擂り潰しにも使えるようになりました。

 

長い歴史の中で、頑丈で密閉性の高いカバーで機械の可動部や乳鉢や杵を覆い、素材の真空乾燥や酸化を防ぎながらの撹拌・擂り潰しをするタイプ、乳鉢を外側からお湯で満たしたカバーで覆い、素材を温めながらの撹拌・擂り潰しができるタイプなど、ラインナップは増え続けました。お客様に合わせて特注したものも含めると、その数は限りなく、無数の石川式撹拌擂潰機が、今日もあらゆる製造現場で稼働しています。

 

時代が進むのに合わせて、私たちが「まぜる」対象も次第に増え、今日では、電子部品材料やセラミックス材料、化粧品材料のほか、軟膏や歯科材料、人工骨材料といった医療分野にも活用していただけるようになりました。最近では、カーボンナノチューブや、全固体電池の材料、導電性のある特殊塗料など、最先端のハイテク材料の技術開発・生産工程にも活用されています。

 

現社長で6代目になる石川工場の歴史。石川工場はこれからも、石川式撹拌擂潰機の撹拌擂潰性能の向上を追求し続けます。私たちは今日も、産業の発展・技術の進歩を願って、撹拌擂潰の実験を繰返しながら、「撹拌擂潰=まぜる」に関する新たな発見を探求し続けています。