石川式自動乳鉢(石川式攪拌擂潰機)は、独自技術により撹拌とすり潰し(摩砕、解砕、粉砕)・分散・混練・混合の同時処理が可能な自動乳鉢です。真空・減圧・加熱・冷却機能等を組み合わせることで、エバポレーター(濃縮装置)、脱泡装置としての機能を発揮することもできます。さらにビーズミル・ボールミル・ニーダー・プラネタリミキサーや三本ロールミルなどの分散機のプレ分散や代替も可能です。さらにまた、マイルドな処理エネルギーよりメカノケミカル、メカニカルアロイング、ソルトミリング、活性度の高い金属の合金化などにも対応可能です。
乳棒のトルクは非常に高いため、粉体のみならず、スラリーやペーストさらには高粘度体まで、様々な素材の処理も可能です。
全固体電池は大きく分けて、負極活物質(負極材)、正極活物質(正極材)、固体電解質で構成されています。
下に全固体電池の構成図と構成物質の主な材料とそれらへの自動乳鉢の応用例を紹介します。
全固体電池構成模式図
構成物質の主な材料名とその作製における自動乳鉢の応用
構成物質名 | 材料名 | 自動乳鉢の応用 |
負極活物質 | リチウム金属 |
・グローブボックスに入れて酸化防止しながら、粒子を微粒子化(粉砕機) ・真空機能付きでバインダーと混合しながら、脱泡も可能(混合機、混錬機) ・リチウム金属の粉砕・均一混合・脱気・固相反応前処理に活用し品質向上に貢献 ・真空機能を活かした酸化防止と高粘度スラリーの調製に大きなメリットがある |
シリコン系材料 |
・シリコン微粒子の粉砕や粒子の均一化(シリコン粒子の膨張抑制)(粉砕機) ・導電助剤(カーボン、CNT)やバインダーとの均一混合・分散(混合機、分散機) ・真空機能付きで酸化防止しながら表面被膜の抑制(微粉砕機) |
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グラファイト |
・グラファイトの微粒子化による電極反応の安定化(粉砕機) ・導電助剤(CNT、カーボンブラック)やバインダーとの均一混合・分散 ・高粘度スラリーの均一調製(気泡除去、均一混合)(混合機、分散、混錬機) |
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正極活物質 | ニッケルマンガンコバルト酸化物 |
・リチウム源と金属酸化物の均一混合(焼結する前)(混合機) ・微粒子化による反応性向上(微粉砕機) ・導電助剤(CNT、カーボンブラック)やバインダーとの均一混合・分散 ・導電ネットワークによる内部抵抗の低減(混合機、分散機、混錬機) |
硫黄系材料 |
・原材料粉末の均一混合(混合機) ・粒径制御と粉末処理(微粉砕機) ・導電助剤(CNT カーボンブラック)との混合(混合機) ・バインダーとのスラリー調整(混合機、混錬機) |
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リッチマンガン系材料 |
・原材料粉末の均一混合(混合機) ・粒径制御と粉末処理(微粉砕機) ・導電助剤(CNT カーボンブラック)との混合(混合機) ・バインダーとのスラリー調整(混合機、混錬機) |
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固体電解質 | 硫化物系固体電解質 |
・原材料粉末の均一混合(混合機) ・粒径制御と粉末処理(微粉砕機) ・導電助剤(CNT カーボンブラック)との混合(混合機) ・バインダーとのスラリー調整(混合機、混錬機) ・真空機能付きで真空中での処理も可能(もしくはグローブボックス内で処理) |
酸化物系固体電解質 |
・原材料粉末の均一混合(混合機) ・粒径制御と粉末処理(微粉砕機) ・導電助剤(CNT カーボンブラック)との混合(混合機) ・バインダーとのスラリー調整(混合機、混錬機) |
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ハロゲン化物系固体電解質 |
・原材料粉末の均一混合(混合機) ・粒径制御と粉末処理(微粉砕機) ・導電助剤(CNT カーボンブラック)との混合(混合機) ・バインダーとのスラリー調整(混合機、混錬機) ・電極との複合化のためCNT等との均一分散(分散機) |
全固体電池材料の作製に自動乳鉢を用いることで、単なる撹拌機や粉砕機としてだけではなく、分散機、混合機、混錬機としての様々な機能を同時に果たすことにより以下のメリットが考えられます。
1.均一で精緻な混合が可能
・粒度制御をしながら均一な混合ができる
・マイルドな処理が可能で粒子の過粉砕のリスクを低減できる(ソフトな混合・微粒子化が可能)
2.粒径の均一化と制御が容易
・微粉砕しながら、粒径を均一に整えることができる
・ナノレベルではなく、ミクロ~サブミクロンレベルの制御が得意
・焼成後の粒成長を最適化できる(均質な前駆体を形成)
3.吸湿性の高い材料の処理が可能(真空機能付き)
・ハロゲン化物系・硫化物系材料は空気中の水分と反応しやすいが、真空機能付き自動乳鉢は真空環境下での処理が可能
・酸化・水分吸収を抑えながら混合・粉砕 できる
4.材料の過度な劣化を防ぐ
・機械的なストレスが少ないため(マイルドな処理エネルギー)、化学変化を抑えつつ処理できる
・活物質の劣化を最小限にしながら均質化
・高エネルギー処理(ボールミルなど)では発熱による反応変化が起こるが、自動乳鉢では温度管理がしやすい
5.少量試作・実験向けに適している
・ボールミルやプラネタリーボールミルは大量の原料が必要 だが、自動乳鉢は最小0.5gの試作が可能
・材料の無駄を減らしながら試作できる(特に高価な材料向け)
・プロセスのスケールアップにも対応しやすい(小規模→大規模への適用が容易)
6.電極・電解質との複合化がしやすい
・固体電解質と正極・負極材料の適切な混合 に適している
・導電助剤(カーボンブラック・CNT)との均一分散が可能
・電極-電解質界面の抵抗を低減 できる
つまり、材料の品質を維持しながら均質化を図れる点が、自動乳鉢の最大の強み です。他の装置と組み合わせることで、より効果的なプロセスが実現できます!
全固体電池で特徴的な固体電解質のプロセスについて説明します。一般的な固体電解質のプロセスは以下に示すような工程になります。
この工程の「粉砕」は一般的にボールミルのような粉砕機が使用され、「混合・スラリー化」には混錬機が使用されます。プロセスごとに装置を準備する必要があります。特に粉砕は、固体電解質の材料を100 nm~1 μm程度の粒径にするのが電気特性的には良いとされています。これをボールミルを用いて実現すると、電解質の材料によっては結晶が割れたりして、逆に電気特性を発揮できない場合があります。
また、低露点下のグローブボックス内もしくは真空機能付き装置で行う必要がある工程もあります。自動乳鉢を使用する場合には、グローブボックス内に入る小さなものを準備する必要があります。
石川式自動乳鉢(石川式撹拌擂潰機)は、材料の粉砕と混合を同時に行うことが可能な自動乳鉢です。この特長を活かして、固体電解質のプロセスの「粉砕」と「混合・スラリー化」工程を自動乳鉢を用いて一度に行うことが可能となります。また、粉砕工程に自動乳鉢を用いると粉砕エネルギーがボールミルに比べてマイルドなため、結晶を壊すことなく粒径を100 nm~1 μm程度に処理することができます。これにより、固体電解質工程の簡素化、効率化、高品質化が進み、研究・開発の加速に貢献できる可能性があります。また、のちほど紹介する弊社製品はグローブボックス内にも入るコンパクトサイズで、硫化物系、ハロゲン化物系、酸化物系固体電解質の研究・開発に有用です。さらに、最小0.5 gの極少量材料でも粉砕、分散、混合が可能なため、高価な材料でも効率よく研究・開発を行うことが可能となります。
一般的な固体電解質のプロセス
自動乳鉢を使った固体電解質のプロセス
上記のプロセス変更を可能とする最適製品を紹介いたします。
■特長
■特長
石川式自動乳鉢(石川式撹拌擂潰機)は乳鉢(臼)と乳棒(杵)の材質、材料の処理量や硬度、粒子径サイズ、粘度等、さまざまな処理材料の状況に合わせた機械を揃えております。
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